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ウェルビーイングの定量化と育成プロジェクト ~新国富指標(Beyond GDP)の活用に向けて~の創設とご支援のお願い
近年、「ウェルビーイング」という言葉が、個人の幸福感や充足感を超え、社会全体の持続可能性や企業の新たな価値創造の鍵として注目を集めています。日本政府の骨太の方針にも掲げられ、経済界・産業界においても関心が高まっています。 |
「新国富指標」の特徴1. 3つの資本で構成
持続可能な開発目標など個別の目標を包括した総合的な評価の方法について、研究者らの成果を国連において集約・整理されています。
近年、インフラ、健康、教育、自然といった異なる価値を、金銭単位に換算し、総合的に評価する指標の研究が進められています。
この総合評価指標の代表が「新国富指標」です。
これは、ノーベル経済学賞受賞者である故ケネス・アロー氏や、英ケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタ名誉教授らが国連と連携して推進した「富の計測プロジェクト」の成果として位置づけられています。 新国富指標は「人工資本」「教育資本」「健康資本」「自然資本」と呼ばれる資本を合算し、最終的に、気候変動による被害、原油価格の上昇で得られるキャピタルゲイン、技術進歩などを反映する全要素生産性などによって調整される指標です。
新国富指標は、その中で以下の3つの「資本」を金銭価値に換算しています:
人工資本(Produced Capital):建物、インフラ、機械などの物理的資産

人的資本(Human Capital):教育、健康、労働力など人間の能力や知識

自然資本(Natural Capital):森林、水資源、鉱物、生態系など自然環境

2. 「見えない価値」を数値化
従来の経済指標では捉えにくかった「自然環境の価値」や「健康・教育の質」などを、シャドウプライシング手法にて金銭価値に換算します。
3. 将来世代の福祉も考慮
新国富指標は、現在だけでなく将来世代のウェルビーイングも含めた「持続可能な豊かさ」の評価を目的としています。
人々の住環境や労働環境、都市空間の質が、心身の健康や社会的なつながりといったウェルビーイングに直接的な影響を与えます。
では、企業はどのようにウェルビーイング向上に貢献できるのか、また、どのように貢献できていると評価できるのか。
その第一歩は、ウェルビーイングを客観的に「数値化」し、現状を把握することから始まります。
どの要素が人々のウェルビーイングに影響を与えているのか、そして、自社の事業活動がそれにどのように関与しているのかを定量的に分析することで、より効果的な戦略の立案が可能になります。
なぜ必要なのか?
GDPは「フロー(流れ)」の指標であり、災害や戦争による復興支出も経済成長とみなされるなど、本質的な豊かさを反映しないという課題があります。
一方、新国富指標は「ストック(蓄積)」の視点から、社会が保有する資産の総合的な価値を評価します。
将来世代のウェルビーイングを担保するものとして、新国富指標は重要な役割を果たします。
さらに総合評価の考え方は、企業や投資家にも活用できます。
国連SDGsをはじめとする多様な課題の解決においては、各国の政府などを通じて企業にも積極的な関与を求められるからです。
その一例がサステナブル投資やESG投資です。
これは収益性だけでなく、環境、社会、企業統治の3つの課題に取り組む姿勢から投資先を判断するものであり、例えば「社会」では社員の機会均等や地域社会への貢献、「企業統治」ではグローバル化に対応した経営体制や企業倫理のポリシーなどが問われます。
SDGsに関連する企業の取り組みは、ESGの枠組みで網羅できており、企業版の総合評価といえます。
活用例
一例として、九州での活用事例をご紹介します。福岡県久山町では、年度の予算付けを新国富指標に基づく優先順位に沿って決定し、インフラ整備を進めました。
また、企業との協同実証実験を実施し、その後の政策を町と共同で実行しております。
また、熊本県では半導体の開発を中心とした取り組みが進められており、そこでのインフラ評価を企業と連携して推進しています。
これらの技術は、「新国富指標」によって、地域経済・環境・社会に与える価値が総合的に評価され、持続可能な産業の育成に貢献しています。
<その他の活用例>
・SDGsの進捗評価:目標達成度を測るための補完的な指標として活用
・地域政策の立案:自治体単位での豊かさの比較や、インフラ整備・自然保護の優先 順位づけに活用
・企業のESG評価:環境・社会への貢献度を定量的に示す指標として注目
また国連においても新国富指標は活用されています。
本プロジェクト代表は、UNEP, UNESCO, UN-Habitat, ADBなどの国際機関プロジェクトにおいて代表を務め、新国富報告書やその活用事例を各国の行政に展開してきました。
たとえばイギリスの自然資本会計など、個別の国ごとの事例を通じて政策への活用が進められています。
国連統計委員会では、環境と経済の関連性を統合的に測定するための統計フレームワークであるSEEA(環境・経済勘定体系)を支援し、国家統計への組み込みを推進しています。
自然資本は、国内外の大手企業においても活用が進んでいます。
企業が自然資本を単なる外部環境として捉えるのではなく、経営戦略の根幹に組み込み、新たなビジネス機会の創出やリスクの低減、企業価値の向上につなげていることを示しています。
自然資本の重要性が高まる中、今後も企業の取り組みは多様化し、進化していくと考えられます。
■ご寄附が実現する具体的な活動
皆さまからのご寄附は、以下のような活動に活用させていただきます。
・新国富指標の長期的かつ網羅的なデータベース作成
・ウェルビーイングを測定するための調査・研究(アンケート、インタビューなど)
・データの収集・分析に必要なシステム開発や専門家の協力
・結果を広く伝えるための報告書やウェブサイトの制作
・地方公共団体や企業との連携イベントの開催
■新国富指標の社会実装ロードマップ
ご寄附を通じて、以下のような成果を目指します。
2027年末:ウェルビーイング指標の試作版を公開
2028年:自治体や企業との連携による実証実験を開始
2029年以降:政策や企業戦略に活用できる「新国富指標」の社会実装
この取り組みにより、経済成長だけでなく、人々の幸せや持続可能性を重視した社会づくりが進展します。
カーボンクレジット市場に加え、生物多様性クレジット市場の形成にも貢献し、自然資本クレジット市場の発展を通じて、ネーチャーポジティブ社会へ貢献できます。
またサステナブルな投資を企業レベルにて貢献できる仕組みを実現し、ポストSDGsにおけるウェルビーイングや包括的な豊かさを軸とした国連の新たな枠組み策定にも貢献します。
人的資本など、国内の生活基盤、産業基盤、農林水産、国土保全といった目的を考える際には、いかに人工のみならず人的なインフラを効果的につくっていくかが大事になります。
このインフラ投資が現状維持される場合をベースラインとして、今後の深刻な社会現象である人口減少を考慮した場合、さらに少子高齢化まで考慮し適切な人材育成の仕組み化に貢献します。
■ 最後に
このプロジェクトは、私たちが目指す「未来の社会のあり方」を根本から見直す、きわめて重要な挑戦です。
皆様の温かいご支援は、経済成長だけでなく、人々の幸せと持続可能性を重視する社会を実現するための確かな力となります。
未来をともにつくるこの大切な歩みに、ぜひご協力をお願いいたします。
■ 寄附の方法
①クレジットカード決済によるご寄附
こちらのクレジットカード決済専用寄附申込みページより手続きをお願いいたします。
ご寄附にあたっては「寄附目的」で 使途特定寄附の「ウェルビーイングの定量化と育成プロジェクト ~新国富指標(Beyond GDP)の活用に向けて~」を選択してください。
②指定金融機関からのご寄附(指定金融機関はこちら)
本学所定の振込用紙(払込取扱票)を使用し、ご寄附いただけます。振込手数料はかかりません。振込用紙(払込取扱票)をお送りしますので、こちらの払込用紙請求ページよりご連絡ください。
ご寄附にあたっては「寄附目的」の欄で「使途特定寄附」を選択し、「ウェルビーイングの定量化と育成プロジェクト(または【ウェルビーイング】でも可)」とご記入ください。
※2022年1月から、ゆうちょ銀行での現金振込の場合は、現金利用負担額が別途必要となります。
③指定金融機関以外の金融機関、ATM、インターネットバンキングからのご寄附
「九州大学基金寄附申込書(Excel様式)・(PDF様式)」を総務部同窓生・基金課へ送付いただいた後、本学の指定金融機関の口座へお振り込みをお願いいたします。恐れ入りますが振込手数料はご負担ください。
ご寄附にあたっては、寄附申込書の「寄附の種類」の欄で、「その他」を選択し、「ウェルビーイングの定量化と育成プロジェクト(または【ウェルビーイング】でも可)」とご記入ください。
寄附申込書のご提出がない場合は、寄附者の確認が困難になり、領収書をお届けできないことがございます。
本プロジェクトへのご寄附は、所得税法上の寄附金控除の対象となります。
詳細は、税制上の優遇措置(寄附金控除)をご覧ください。
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【寄附金の納付に関するお問合せ先】
九州大学総務部同窓生・基金課基金係
TEL 092-802-2150
FAX 092-802-2149
E-mail k-kikin@○jimu.kyushu-u.ac.jp(メールアドレスの中の○を消してください)
【本事業に関するお問合せ先】
九州大学 都市研究センター
E-mail kayoko.windle@○doc.kyushu-u.ac.jp(メールアドレスの中の○を消してください)
