Voices

支援を受けた研究者・学生等の声

C&Cプロジェクト受賞者に聞く アイデアの使いみち。(別冊九大広報より)

2022.08.03

2021年度最優秀賞・優秀賞受賞者

ページに掲載

2022年6月取材
C&C受賞者の3名(左から須藤さん、本屋敷さん、吉野さん)
C&C受賞者の3名(左から須藤さん、本屋敷さん、吉野さん)

 九州大学では、学生のユニークなアイデアや研究プロジェクトの実現を助成するチャレンジ&クリエイション(C&C)事業を九大基金によって運営し、1997年からこれまで延べ千人超が参加しています。2021年度の最優秀賞および優秀賞を受賞したプロジェクトの学生に、アイデアを形にし、プロジェクトを進めてきたからこそわかったことを教えてもらいました。

-受賞おめでとうございます。皆さん面識はある?
須藤:授賞式などでは会ったことがあるけど、3人そろって話をする機会は初ですね。

-C&C応募のきっかけは何でしょう?
須藤:PLANET-Qで受賞したスペースバルーンプロジェクトは、成層圏にバルーンを停滞させ、災害が発生した際の通信復旧支援などを最終目標に掲げてます。バルーンやロケット等の開発は非常にお金がかかるため、何か制度がないかなと思ってC&Cにたどり着きました。
本屋敷:僕達iGEMも資金不足がきっかけでした。今回のプロジェクト「Alternative to Canary」はカナリアの代替品という意味で、ガス検知をカナリアがしていた(生物センサーだった)ところからもじって、合成生物学を使ったバイオセンサーを開発するものです。実験環境、試薬、国際大会出場費などに絶えずお金がかかるんですよね。
吉野:僕は自分の祖母との体験から、コロナ禍でコミュニケーションが不足している高齢者に簡単に離れた家族と会話ができる簡易オンラインデバイスの開発を提案しましたが、デバイス購入にもお金はかかるし、やっぱり資金問題は色んな活動をする上で大きいよね。




本屋敷 健太さん

吉野 弘毅さん

須藤 路真さん

-C&C採択の苦労とかあった?
吉野:今回の採択前にも自分はQRECが行うアイデアバトルやC&Cの経験があって、プロジェクトはただ「やりたい」という好奇心ベースではなく、課題解決を踏まえて計画すべきだという分析をしていたから苦労は少なかったかも。でも採択後、思ったよりハードウェアの制約が多いことが分かって、そこは苦労したかな。あとプロトタイプのデモを実際の病院に依頼するのが難しかったり
本屋敷:僕はそもそも合成生物が知られていないのが悩み。僕もメンバーもiGEMに入った当初は合成生物を全然知らなくて、実験環境を作るところからでしたけど、先生の応援や色んなサポートで採択していただきました。
須藤:上空利用申請、海上作業届の提出とか、調整にすごい時間がかかって。そこは採択後の苦労ではあるかな。

-C&Cをやって良かった?
須藤:やって良かったです。最初は資金目当てだったんだけど、審査員の方はもちろん、C&Cで色んな人とつながれたんですよ。興味本位で飛び込んだけど、このプロジェクトで事業化を模索し、学べたのは大きいメリットだよね。
本屋敷:でもQRECは実は以前は怪しい団体だなと思ってた(笑)。
吉野:僕も思ってた(笑)。留学プログラムでアントレプレナーシップとQRECの存 在を知ったんだけど、その時留学先のアントレプレナーがとても楽しそうだったんです。今はアントレプレナーシップ自体が、世の中を生き抜くOSみたいなものだなと思ってます。



正直今は自分の人生をかけて取り組みたいというのがよくわからなくて。
でも悩んでいる今だからこそ、チャレンジしているというのはあります。
 

システム情報科学府情報理工学専攻 博士課程1年 吉野 弘毅
「高齢者のための簡易オンライン面会デバイスの開発」プロジェクトでCC2021年採択、優秀賞を受賞。QREC公認団体であるQUSIS(九大起業部)の共同代表。一人カラオケが趣味!「採点も分析します」

-九大に入ったきっかけは?
須藤:あまり面白い事言えないんですが(笑)、元々宇宙に興味があって、機械航空なんかかっこいいなって(笑)。
吉野:自分も普通な回答で…家から通えるところを選んだかな。でも結局どこでやるのかはどうでもよくて、自分がどうするかだなって思って。
須藤・本屋敷:かっこいい!
本屋敷:とにかく研究で人を救いたいって気持ちがあって、結果九大を選んだけど、九大はアントレプレナーはもちろん、色んな選択肢が充実していて、チャレンジを応援してくれてると感じる。
須藤:同じこと思ってた、とにかくチャレンジが許されるね。
吉野:アントレプレナーシップは九大は自治体と一丸となってやってるのも強みだよね。




九大はアントレプレナーを応援してくれるのはもちろんだけど、色んな選択肢が通常の授業以外にも充実してて。チャレンジを応援してくれてるとすごく感じる。  
理学部 生物学科3年 本屋敷 健太
QREC公認団体である、「iGEM Qdai (現generate(ジーンレート))」代表。同団体が応募したプロジェクト「Alternative to canary」でCC2021年採択、最優秀賞を受賞。以前からしていたドラムに加え最近三味線も始めたそう。

-将来のビジョンは?
本屋敷:自分は広島出身だというのもあって、人の苦しみとかを身近に感じてきて。原因がわからないとか、治療法がないとか、そういう病気に研究的なアプローチがかけられるようになれたら良いなと思ってる。
吉野:これまでも色んな挑戦をさせてもらってきたから、後輩のために何か、ただサポーターに徹するんじゃなくて自分の背中で見せていきたいなと思うようになったね。
須藤:自分の興味のある分野で、世の中の役に立つサービスを立ち上げていけたらと思ってる。今は大学院進学も考えているけれど、将来的には起業したいな。
本屋敷:こういう風に思うのもC&Cの影響はあるね。
須藤:まさに自分の領域の中に存在しなかったものが選択肢として出てきた感じ。以前は大企業を目指してたんだけど、アイデアバトルとかC&Cに採択されて、色々な人と関わり、話していくうちに、大企業に就職することが必ずしも正解ではないと感じるようになった。自分が本当にやりたいことをするには、ある程度のリスクを背負わないといけないと知ったんだよね。
吉野:そうだね。自分も4年生でアイデアバトルとかやって、選択肢がすごく広がった。時期的にためらいもあったけど、まずやってみようって。その結果本当に色んな人と出会えて視界が広がったかな。



色々な人と関わり、話していくうちに、大企業に就職することが必ずしも正解ではないと。
本当にやりたいことをするには、ある程度のリスクを背負わないといけないと知りました。


工学部 機械航空工学科4年 須藤 路真
九州大学・QREC公認団体である「PLANET-Q」代表。同団体が応募したプロジェクト「スペースバルーンプロジェクト」でCC2021年採択、最優秀賞を受賞。キャンパス近くのアメリカンで非日常が感じられるビーチが好きだそう。

-最後に寄附者の方へメッセージを
本屋敷:感謝しかないです。何かをやろうとした時、資金面での安心感があるのはすごくありがたかったです。それに発表する場が与えられるというのはすごくモチベーションが大きかった。
須藤:そうだよね、自分達のチームでも機材の購入費用や遠 征費といった資金面で苦労していたので、資金面での抵抗感がなくなるって非常に大きかったです。
吉野:そうそう、自分は後輩にバイト代をねん出できたのが ありがたかったです。大げさなのかもしれないけど、雇用を生んだなって思う。地方って首都圏に比べるとリーチできるリソースに限りがあると思う、その中で機会をもらえたのは本当にありがたいし、人のお金を預けて頂いていると思うと、予算の使い方を考えたり、そういった感覚を実際に体験できたのはとても大きいです。
須藤:お金がないって最初につまずくポイントなんですよね、 それに対する選択肢が与えられるという幸せ。そこからさらにフィードバックしてもらえて、非常にメリットが大きいなと。こういった機会を与えてくれたことに本当に感謝しています。

-こうやって皆さんの活躍を見れて私たちも非常にうれしいです!今日はありがとうございました。


このインタビューは、別冊九大広報 vol.1の特集に掲載されています。


ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター(QREC)
米国で起業家として大成功をおさめた九州大学の卒業生、ロバート・ファン博士の百周年記念寄附をきっかけとして設立されたアントレプレナーシップに関する総合的教育・研究センターです。

チャレンジ&クリエイション(CC)
「キャンパスから創造と挑戦の風を起こそう」をテーマに、九州大学基金の支援を受け、本学学生のユニークなアイデアや研究プロジェクトの実現を助成する全学事業です。
新規性や社会的インパクト等を基準に採択され、最大50万円の資金提供を受けて計画実現を目指します。


アイデアバトル
学生が温めている独創的で荒削りなアイデアを、潜在的なニーズや競合技術、知的財産権の事前調査を行うことやメンターからのアドバイスを受け、より現実的なプロジェクト提案を可能にするプロジェクトです。