Voices

支援を受けた研究者・学生等の声

九大の刺激的な環境で、研究だけでなく文化にもたくさんふれたい

2023.01.04

オクサーナ・ウクライネッツ

地球社会統合科学府



2022年5月に開始した「ウクライナ学生・研究者支援基金」。皆さまのご支援をもとに、11月までにウクライナから6名の学生及び研究者を受入れることが出来ました。今回はキーウ国立大学から来たオクサーナ・ウクライネッツさんに、ウクライナの状況、九州大学での研究などについてお話をお聞きしました。

ウクライナからドイツへ。 離ればなれになった家族
私はキーウから100㎞ほど離れた小さな町、ジトーミルに父母、妹2人と住んでいました。父は7年前だったでしょうか、40歳のころ軍隊を退きましたが、今回の戦争で多くの退役軍人と同じように父も支援部隊として復役しました。
2022年2月の侵攻が始まった後、私と妹2人は母とドイツに避難しました。20歳の妹は医学部の学生です。医師になるための試験が戦争で実施されていませんでしたが、10月に再開され、無事試験に合格して今は病院実習のためにウクライナに戻っています。8歳の妹は今もドイツでオンライン授業を受けています。ダンスやピアノなどの科目がなく、学校に戻りたいと言っています。


通っていた大学も攻撃を受け
2月の侵攻では、ウクライナ24州のうちの北部の街がロケットによる攻撃を受けました。月曜の朝7時だったかと思います、市役所が攻撃され、私が通っていた大学も同じく攻撃を受けました。5分毎の攻撃を受け、その間はずっと家族や友達と連絡を取り合い、ニュースを見ていましたが、誰かが撮った写真で毎日通っていた大学の廊下が破壊されているのを知りました。
攻撃が朝早かったため、幸い大学では死者は出なかった一方、通勤時間帯だったことから街では多くの人が命を落としました。



オクサーナさんは地図を示しつつ当時の様子を説明してくれました

日本へ行くのを躊躇う私を父が背中を押してくれた
私は修士で現代英語によるコミュニケーションを学んでいます。当初、日本に来ることは考えていませんでした、ウクライナからあまり遠い国に行くことは考えていなかったんです。そのため留学の申請などはしていませんでした。その時父が「なんで日本に行かないの?行きたかったんじゃないの?」と言ってくれました。父の後押しで、5月に文部科学省が出していた日本の大学の留学先一覧を探して申請し、8月に担当教員を見つけました。九州大学はとても人気で大きな大学だったので来られると思っていませんでした。
元々日本にはすごく興味がありました。日本人の気質やウクライナとは異なる文化が好きです。昔からの伝統、例えば生け花や着物などと今の日本のカルチャー、そのミックス感が好きですね。ウクライナではオンラインで授業を受けていましたが、九州大学に来て対面で先生や友人たちとコミュニケーションが取れるのが本当に嬉しいです。
現在は言語での政治のコミュニケーション、例えばイギリスの女性政治家、サッチャー氏の言語による影響を調べています。サッチャー氏に関する900ページに及ぶ本を図書館で探して調査中です。


九州大学に来て
九州大学は緑も多く、海も近くてとても気に入っています。現在は支援により寮に住んでいますが、とても快適で寮の方もとても親切です。色んな国・地域から来た人が寮には住んでいるのでとても刺激的です。10月1日に福岡に来て、もちろん研究が第一ですが、せっかく来たので日本の文化をたくさん見たい、週末には色々なところに積極的に行っています。御朱印帳も持っているんですよ、今度は住吉神社に行く予定です。
家族とは毎日ビデオコールをしています。もちろん今100%幸せというわけではありません、やはり家族や友人たちが心配ですし。ですが福岡でも精一杯やりたいと思います。家族もとても福岡に興味を持っていますよ。


 ※このインタビューは2022年10月に行い、別冊九大広報 vol.2に掲載されています。



ウクライナ学生・研究者支援基金
ロシア軍によるウクライナ侵攻により、学びや研究を継続することが困難となっているウクライナの大学・機関等に在籍している学生や研究者を受け入れ、学びや研究を続けるための経済的支援を行うことを目的とした基金です。