Voices
寄附者の声
仲曽根 昇 様(1975年大学院工学研究科修了)
2024.05.29
私の家は、経済的には余裕がありませんでした。父は、戦後直ぐの混乱の中で臨時採用としての会社勤めでしたので、私の進学は私立の学校は無理で、ギリギリ通学ができる九大に入ることが目標でした。頑張ったからか運よく入学でき、奨学金と家庭教師のアルバイト代で何とか卒業できました。そんなこともあり、新型コロナウイルスの大流行で、アルバイト先が無くなって困っている学生のニュースを見て、わずかですが寄付をすることにしたのが九大への寄付のきっかけでした。
私が入学したのは、昭和43年で大学紛争が始まる年でした。高校までの部活は、体育会系でしたが芽が出なかったことから他を探すことにしました。高校でブラスバンドに入っていた高校の同級生が、九大フィルに入るとのことで私も付いて行くことにしました。九大フィルは丁度第100回定演でベートーベンの第9番交響曲を練習中で熱気にあふれていました。私は本格的に音楽をやるのは初めてでしたが、取り組むことにしました。それからは吸い込まれるようにクラシック音楽にはまっていきました。
それから暫くは、大学紛争で講義も頻繁に中止になっていましたので、九大フィルに入らなければ、後から悔いる日々になっていたかもしれません。元来の引っ込み思案で消極的な性格を変えるのに、この時期の経験の影響は大きく、社会に出てから大いに役立ちました。私の頃は、就職進路については情報も乏しく、漠然としたものしか判断材料がない時代で、何となく決めていました。また、ハラスメントの概念もなく根性で乗り切るのが普通でした。選択肢が少なく、逆に生き易い時代だったかもしれません。今は情報量も多く発信したことが瞬時に広まって、選択幅も大きい反面、行動には大きな責任が伴う難しい時代です。研究者や学生の皆さんには、自分が目指すものは何かをよく考え、決めたら前向きに進んでください。微力ながら皆さんを応援させていただきます。
写真は九大卒業後すぐの頃の仲曽根さんです。
※大学院工学研究科は現在は大学院工学研究院に改組されています